運動心理学に基づく

とは… 、 運動の学習/指導、神経の発達/情報の認知など、パフォーマンス向上を科学する学問として捉えています。

1.目と手の協応 (人は手に命令する)

 人間は目からの情報を瞬時に判断し、自分の動きをコントロールすることができます。視覚から入力される情報を脳で瞬時に処理をし、運動の指示情報が出力されます。その運動出力先が手の場合、一般に「目と手の協応(eye hand coordination)」と言われています。
 「頭を叩かれそうになる」と、サッと手が上がり頭をかばいますよね。日常的に、ごはんを食べたりパソコンをブラインドタッチをしたりと、目と手は非常に仲が良くて、無意識に手に命令を出すことが得意です。
 テニス初心者の方は、たいてい手打ちになってしまうのはそのためです。そして、それ以外の体の使い方を普段から経験していないということが上達を遅らせている重要なポイントなのです。

2.脳地図 (足・体幹は神経が少ない)

 「目と手の協応」は、運動心理学では有名な理論です。人間の脳は目からの情報処理に多くの分野を使います。命令するときも手や顔の表情などに多くの分野を使います。
 従って、相当意識をして練習をしないと、足や体幹の筋肉群をとっさの判断で使うなんてことは不可能なんです。

3.体幹/足 (でも筋肉の量は一番多い)

 体幹や足の筋肉は全体の約70%ぐらいを占めています。これをパワーとして使わないてはありません。しかし、交感神経が多く通っている場所ではありませんので、意識を高く持たないと動かせません。足で食事ができるようになる、そんな努力に似ていると思います。

4.オープンスキル (テニスは難しいスポーツ)

運動の特性を分類する一つの方法にオープン-クローズドスキルがあります。様々な外部情報を一瞬にして判断しなければならないことに加え、自らも移動しバランスやスウィングをコントロールしなければなりません。
 テニスは世界で3番目に難しいスポーツ(1番はヨット競技、2番は馬術競技)だという方もいます。従って、テニスはオフコートで正しい知識やイメージをつくってからコートに向かう習慣をつけることが上達の近道です。

5.フィードフォワード (間違ったイメージは無駄)

 フィードバックが「反省」なら、フィードフォワードは「予想・予測・メンタルリハーサル」と言えるかもしれません。水たまりを飛び越せるかというイメージといったものは、ある程度の経験によるものです。
 テニスの場合、ミスから学ぶより先ず上級者の打ち方を基本的な目標行動としてしっかり理解しておくことが重要なんです。フィードフォワードレッスンはオンコートでは効率が上がりづらいでしょう。

6.キャナリゼーション (癖はなかなか治らない)

人は動作を繰り返すと慣れてきます。それは様々な動きを司る神経や情報伝達経路の連携が出来てくるからです。それを神経経路の水路化(づけ)などと言います。
 そうすると自動的に複雑な運動を繰り返すことができます。自転車に乗るのも、車の運転も最初は大変でしたが、神経経路が形成されると簡単にできるようになりますね。
 上手くなるということは、そういうことなのですが、間違った知識があると逆に変な癖がついてしまうということにもなります。

7.レディネス(臨界期) 運動学習(音痴、運動音痴、言語・訛り)と年齢

 人が言葉を覚えたり、運動神経が良くなったりする成長の時期があります。子供に言葉で教えるよりも、たくさん球を打たせた方が上達するもので、運動神経の成長時期が過ぎた大人に何の情報を与えずに球を打たせたら、下手くそをより強化している所行になってしまいます。
 大人になって、ボール投げが上級者の投げ方に近づいていくようにするには、どうすれば良いか。根性でも、おべっかでもなく、正確な情報で、反復練習していく以外に方法はありません。